大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和57年(行コ)49号 判決 1984年4月26日

東京都葛飾区新小岩一丁目四四番四号

控訴人

総武興業有限会社

右代表者代表取締役

李学伊

右訴訟代理人弁護士

益本安造

東京都葛飾区立石六丁目一番三号

被控訴人

葛飾税務署長

山本作市

右指定代理人

桜井登美雄

佐藤昭雄

大原豊美

江口厚太郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  当事者の申立て

(控訴人)

1  原判決を取消す。

2  被控訴人が控訴人に対し昭和五一年六月三〇日付けでした次の三事業年度分の法人税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち、次の部分をいずれも取り消す。

(一) 昭和四七年七月一日から昭和四八年六月三〇日までの事業年度分についての処分のうち、所得金額を二〇二二万二六九〇円として計算した額を超える部分

(二) 昭和四八年七月一日から昭和四九年六月三〇までの事業年度分についての処分(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの)のうち、所得金額を三二八一万六七九五円として計算した額を超える部分

(三) 昭和四九年七月一日から昭和五〇年六月三〇日までの事業年度分についての処分のうち、所得金額を二九〇三万四九二五円として計算した額を超える部分

3  訴訟費用は、第一審、第二審とも被控訴人の負担とする。

(被控訴人)

控訴棄却

二  当事者の主張

当事者双方の事実上の主張は、次のように附加、補正するほか、原判決事実摘示記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四丁裏一行目の「本件処分は」の次に「、事前に」を加え、同二行目の「違法である。」を、「違法であり、この点だけで重大かつ明白な手続上の瑕疵によるものとして取消さるべきである。」と、同五丁裏一行目の「本件処分をしたものである。」を「本件処分をし、(4)第二事業年度における建物減価償却費の否認の点も、裏付け資料の蒐集とその調査をまたないでしたものである。」とそれぞれ改める。

2  同六丁目裏七行目の「このような理由だけでは」を、「パチンコ営業にも交際費は必要であるから、これらゴルフプレー費用を交際費として否認するには、右の別紙一(1)、(2)のように支払先(ゴルフ場)名等を掲げただけでは足りず、同伴競技者名も調査の上掲げるのでなければ、」と改める。

3  同七丁表七行目の次に、行を替えて、次のように加える。

「一の二 調査不十分ないし恣意的判断の有無

本件処分は、十分にして相当な範囲にわたる調査に基づくものである。

ところで、国税通則法第二四条にいう「調査」については、その方法、範囲、時期等について具体的な手続規定が設けられていないから、その手続面に関しては課税庁に広汎な裁量権が与えられているというべきであり、右「調査」が全く行われなかったというのであれば格別、これが実質的に不十分であったとしても、その点は別個に更正処分の違法原因とはならず、当該処分の内容に違法、不当があればそれを理由としてその取消しを求めれば足りるものと解すべきである。したがって、本件処分に当たって仮に右調査に不十分なかどがあったとしても、それ自体は本件処分の取消原因にはならない。」

4  同七丁裏三行目の「法律解釈上の問題であり」を「それらの支出自体に争いがあるのではなく、ただその支出についての法的評価(損金といえるか否か)を異にしたことによるのであるから」と、同九、一〇行目の「使用目的等が不明であって会社の損金とは認められない、との根拠をも」を「同伴競技者との関連において使用目的からそれらが会社の損金と認めることができない理由記載をも、独自に」と、それぞれ改める。

5  同一〇丁裏七行目の「公正妥当な会計処理といえる。」の次に、「本件の仲介手数料につき右の原則と取扱いを異にすべき理由はないし、また、減価償却制度の趣旨目的から、直ちに後記の控訴人主張のように右の土地等につき仲介手数料額が資産計上を否定されるとの結論にもならない。」を加える。

6  同一九丁表六行目の「損金に計上すべきものである。」の次に、続けて「すなわち、太平洋クラブでは、入会するには資格保証金のほか入会金をも支払わなければならないところ、その額が会員券に記載されて転売価格に反映されるのは資格保証金のみであり、権利を譲渡した場合には、譲受人は譲渡人が先に入会金を支払っていると否とにかかわりなく新たにこれを支払い、かつ譲渡人はその返還を求めることができないこととされている。したがって、本件入会金は、いわば名義書替料に当たるもので(太平洋クラブでは、原始入会者からもこれを受けている。)、これが高いことはかえって会員権の評価を引下げている。」を加える。

7  同一九丁裏九行目の「するものである。」の次に、続けて、「なお、仲介手数料自体は本来資産価格を増すものではないから、これを有形固定資産の価格に加算することは、当該資産の資産価格を水増しするという不合理を犯すことにもなる。」を加え、同二〇丁裏二行目の「誤解するものである。」を「誤解するものであり、土地にあっては、右仲介手数料は直ちに当該年度において損失として処理されるべきである。」と改める。

8  同二三丁表六行目の「べきものである。」の次に、続けて「すなわち、控訴人はパチンコ店営業といえども金融、労務情報の収集等の企業活動を必要としているのであって、右「ゴルフプレーの同伴者の中にも、同業者、金融に関係している者、賞品の仕入先、機械屋、税理士等が含まれており、これらの者と親睦を図ることにより、資金対策、賞品、機械の仕入れ、従業員の補充に有利になるのである。」を加える。

三  証拠関係

証拠関係は、原判決事実欄第五並びに当審記録中書証目録及び証人等目録の各記載を引用する。

理由

一  当裁判所もまた本件処分に控訴人主張の違法はなく、本訴請求は失当であると判断するものであって、その理由は、次のように附加、補正するほか、原判決理由記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二六丁表一〇行目の「の高木」を削り、同裏六行目の「乙号証」の次に「(本件第二事業年度における建物減価償却費関係のものも含む。)」を加え、同一〇行目の「右結論」を「、少なくとも独立して本件処分を取消すべき調査不十分(手続上の瑕疵)が被控訴人側にあるとは認められないとの結論」と改める。

2  同二八丁表一〇行目の「要求するところではない。」の次に、「まして、控訴人から開示されないのに、同伴競技者の名まで明らかにしなければ右支出項目を損金と判断するに至らなかったことの理由が不備となるいわれはないのであって、控訴人の主張は独自の見解に基づくものにすぎない。」を加える。

3  同二九丁裏末行の「取得費として」を「この年度においては一たん権利の取得費として」と改め、同三〇丁表一行目の「すべきものである。」の次に「もし、後に当該権利を処分した際に、右入会金を譲受人からもゴルフクラブからも回収できないときは、その年度においてこれを欠損とすることができる。」を加える。

4  同三二丁裏六行目の「会計処理基準はない。」の次に、続けて「この点について、控訴人は仲介手数料は資産価格を増すものではないからこれを加算するのは資産価格を水増しするものであると主張するが、取得者は譲渡人以外の者に右付随費用を支払ってもその資産を取得するに値するとしたものであって、仲介人を介さずに取引ができるときには譲渡人は右手数料額をも含めた額を代価として入手することも可能なのであるから(すなわち、本来の資産価格のうちの一部が仲介人にも流れたにすぎないということができる。)、控訴人の右主張は当を得たものではない。」を加え、同三三丁表六行目の「のである。」の次に、「それ故、非減価償却資産について、仲介手数料のような付随費用額を算入する点について、反対解釈の根拠になるものではない。」を、同八行目の「相違を強調するが」の次に「、両者は減価償却をするか否かの点では取扱いを異にするものの」を、それぞれ加え、同三二丁裏一〇行目の「反する」を「反し、違憲である」と改める。

5  同三四丁表一行目の「の証言及び原告代表者尋問の結果(一部)」を、「及び当審証人鈴木正の各証言並びに控訴人代表者尋問の結果(原審及び当審。以下同じ。)(一部)」と、同三五丁表三行目の「一個のコインゲーム場とする」から六行目までを「一個のコインゲーム場とするには、一部の柱を抜いたり梁を入れたりして一個の建物につなぎ合わせる工事をする必要があった。なお、控訴人は、昭和四八年一二月に訴外株式会社鈴木デザインに原町の土地、建物でコインゲーム場をやりたいが何台位の機械が入るか平面図を作成することを依頼し、鈴木デザインは四五センチメートル四方程の用紙に平面図を作成して、控訴人に渡したことがあったが、右建物について増改築実施のための具体的な設計や見積りを依頼したことはなかった。」と、同裏九行目の「原告は当初から」を「控訴人は、右土地建物を取得する過程で建物を改造してコインゲーム場を一時開くことができないかと考えたことはあったとしても、結局、」と、同末行の「意図であったものであり」を「意図でこれらを購入したものであり、控訴人の意図は暫らく措くとしても、少なくとも右取得に当たり」とそれぞれ改め、同三六丁裏末行の次に、行を替えて「また、仮に控訴人代表者に右建物の引渡しを受けた後にこれを利用してコインゲーム場を経営しようとの主観的意図があったとしても、現実に増改築を施した上その増改築費用相当額を計上するのであれば格別、右(1)から(4)までの認定事実からすれば、従前の原町の建物について減価償却に値する資産価額の計上を認めることは、企業会計として公正妥当なことということはできないのである。」を加える。

6  同三六丁表末行、同裏一行目の「前掲甲第三号証の二、三」を「右甲第二号証の二、三」と改め、三八丁表末行の「本件改装工事は」の次に「木造ないし木骨モルタル造の建物である」を加え、同三九丁表四行目の「建物附属設備」を削り、同四〇丁表四、五行目の「店用簡易装備」を「建物附属設備・店用簡易装備」と改め、別紙三の最上段、の欄の中央に「」とあるのを「5の項の金額の按分」と改める。

7  同四四丁表末行及び同裏五行目の「高木」を「李」と、同四五丁表九行目の「原告代表者は」を「控訴人は、パチンコ店営業といえども企業活動として金融、労務情報等の収集を必要とすると主張し、控訴人代表者は原審及び当審において」と、同三行目の「事業家としての高木個人」を「総体としてみれば事業家としての李個人」と、同四行目の「原告の」を「法人である控訴人の」とそれぞれ改め、同行の「結びつく事柄ではない。」を「結びつく事柄ではなく、右供述に顕れた程度の抽象的な関連性をもってこれら「ゴルフプレー費用を税法上の交際費扱いにすることは、公正妥当な取扱いということはできない。」と、それぞれ改める。

二  そうすると、本件処分中控訴人が違法と主張する部分の取消しを求める本訴請求は理由がないから、これを棄却すべきである。これと同趣旨に出た原判決は正当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田尾桃二 裁判官内田恒久及び同藤浦照生は、転補につき署名押印することができない。裁判長裁判官 田尾桃二)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例